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2026/6/11
法改正
つながらない権利/ 労働基準法「40年ぶりの大改正」で変わる現場のルール5
労働保険の年度更新等で、間が開いてしまいました。
前回に引き続き、「労働基準関係法制研究会報告書(以下、「報告書」)」から考えられる改正のポイントを解説していきますね。
第5回は、【5】つながらない権利 について
【5】つながらない権利
「報告書」P.43より抜粋
| (4)つながらない権利 本来、労働契約上、労働時間ではない時間に、使用者が労働者の生活に介入する権利はない。 しかし現実には、突発的な状況への対応や、顧客からの要求等によって、勤務時間外に対応を 余儀なくされ、私生活と業務との切り分けが曖昧になり、仕事が私生活に介入してしまう ことになる状況も容易に発生し得る。 (中略) 例えば、「つながらない権利」を法制化しているフランスの例を見ると、具体的な内容の設定の 仕方・範囲は労使で協議して決めており、その内容は企業によって様々であるが、労使交渉で 合意に至らない場合には、つながらない権利の行使方法等を定めた憲章を作成することが 使用者に義務付けられている。 (中略) こうした点を整理し、勤務時間外に、どのような連絡までが許容でき、どのようなものは 拒否することができることとするのか、業務方法や事業展開等を含めた総合的な社内ルールを 労使で検討していくことが必要となる。このような話し合いを促進していくための積極的な方策 (ガイドラインの策定等)を検討することが必要と考えられる。 |
について、今の制度はどうなっているのか、何が変わろうとしているのか、会社はどう対応すべきかを見ていきましょう。
1.つながらない権利とは?
「つながらない権利」とは、
労働時間外に業務上のメールや電話への応答を拒否できる権利をいいます。
本来、労働契約上、労働時間ではない時間にまで使用者が労働者の生活に介入する権利はありません。
しかし現実には…
- 夜間や休日のメール対応
- LINEやチャットでの業務連絡
- 「急ぎだから」と言われる電話
- 顧客対応のための時間外返信
こうしたことが常態化し、
仕事と私生活の境界が曖昧になっている企業も少なくありません。
2.海外ではどうなっている?
代表例が、フランスです。
フランスでは、労働法により「つながらない権利」が法制化されています。
特徴は、
- 具体的な運用内容は労使で協議して決定
- 合意に至らない場合は、
使用者が「つながらない権利の行使方法を定めた憲章」を作成する義務がある
つまり、「法律で細かく一律に決める」のではなく、
企業ごとの実態に応じてルールを作る仕組みになっています。
3.日本の現状
日本では、まだ明確な法制化はされていません。
しかし、
- 長時間労働対策
- メンタルヘルス対策
- ワークライフバランス推進
- 働き方改革の流れ
こうした流れの中で、「勤務時間外の業務連絡」の扱いは大きなテーマになっています。
今後は、
「勤務時間外に、どのような連絡までが許容でき、どのようなものは拒否できるのか」
について、ガイドライン整備が進む可能性が高いと考えられます。
4.今後変わると予想されるポイント
① 「暗黙の了解」が通用しなくなる
「返信して当然」という空気が問題視される可能性があります。
② 連絡のルール明文化が求められる
- 緊急時の定義
- 役職者の対応範囲
- チャットの使用時間帯
- 休日連絡の扱い
こうした事項を社内規程やガイドラインで明確化する流れになるでしょう。
③ 管理職のマネジメント責任が重くなる
「部下が自発的に返信した」は通用しにくくなります。
実質的な指示・心理的強制があれば、労働時間と判断される可能性があります。
5.改正されると企業はどうなる?
プラス面
- 従業員の定着率向上
- メンタル不調の予防
- 採用競争力アップ
- 生産性向上
注意点
- 顧客対応とのバランス
- 少人数企業での業務カバー
- 緊急対応の線引き
特に中小企業では「人が少ないから難しい」という声も多いでしょう。
だからこそ、現実的なルール設計が重要になります。
6. 経営者が今から準備すべきこと
今すぐ法改正がなくても、次の準備は有効です。
- 現状把握(時間外連絡の実態)
- 緊急連絡の定義整理
- 役職別ルール検討
- 就業規則・社内ガイドラインの見直し
- 管理職研修の実施
ポイントは、
「全面禁止」か「無制限容認」か、の二択にしないこと。
自社の事業内容・顧客層・人員体制を踏まえた、
実務に耐えるバランス型ルールを検討することが重要です。
7.まとめ
「つながらない権利」は、
- ワークライフバランスの実現
- 働き方改革の深化
- 労働時間管理の厳格化
という流れの中で、今後議論が進むテーマです。
難しい問題ではありますが、「勤務時間外にどこまで許容するのか」を
労使で話し合うこと自体が、これからの企業経営において大きな意味を持ちます。
時間がかかる事なので、今から早めの対策を検討されるのがいいですね。
次回は
「労働基準関係法制研究会報告書」から考えられる7つの改正ポイント
【6】年次有給休暇取得時の賃金の算定方法について解説します。