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2026/6/26

法改正

副業・兼業の場合の割増賃金/ 労働基準法「40年ぶりの大改正」で変わる現場のルール7

いよいよ「労働基準関係法制研究会報告書(以下、「報告書」)」から考えられる改正のポイント最終回になります。

最終回は、【7】副業・兼業の場合の割増賃金 について

7】副業・兼業の場合の割増賃金

「報告書」P.48より

(2)副業・兼業の場合の割増賃金

労働者が副業・兼業を行う場合においては、労働基準法第38条を受けた通達に基づき、
事業主を異にする場合についても労働時間を通算して割増賃金を支払うこととされている。
このため、現在は厚生労働省のガイドラインに基づき、労働契約の締結の先後の順に
所定労働時間を通算し、次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することによって
割増賃金を計算するか、あらかじめ設定したそれぞれの事業場における労働時間の範囲内で
労働させる管理モデルを利用するかのいずれかとされている。 この取扱いについては、
割増賃金の計算のために本業先と副業・兼業先の労働時間を1日単位で細かく管理しなければ
ならないこと(その過程で、労働者自身も細かく自己申告する等の負担が生じること)など、
複雑な制度運用が日々求められるものとなっている。このことが、企業が雇用型の副業・兼業を
自社の労働者に許可することや、副業・兼業を希望する他社の労働者を雇用することを難しく
していたり、労働者が企業に申告せずに副業・兼業を行う要因の一つになったりしているの
ではないか、また、企業が雇用型の副業・兼業を自社の労働者に許可しないことで、労働者が
副業・兼業を行うことを諦めることにつながっているのではないかとの指摘もある。

(中略)
労働者が副業・兼業を行う場合において、賃金計算上の労働時間管理と、健康確保のための
労働時間管理は分けるべきと考えられる。 こうした現状を踏まえ、労働者の健康確保のための
労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金の支払いについては、通算を要しないよう、制度改正に
取り組むことが考えられる。その場合、法適用に当たって労働時間を通算すべき場合とそうで
ない場合とが生じることとなるため、現行の労働基準法第38条の解釈変更ではなく、
法制度の整備が求められることとなる。

1.現状:今の法律ではどうなっている?

現行法では、労働者が副業・兼業を行う場合、企業(事業主)が異なる場合であっても

すべての労働時間を通算して割増賃金を算定・支払いしなければならないルールになっています 。

現在は厚生労働省のガイドラインに基づき、原則として以下の非常に複雑な手順で労働時間を通算しています 。

  • 手順① 所定労働時間の通算 ─ 先に労働契約を締結した企業から、後に契約した企業の順に通算
  • 手順② 所定外労働時間の通算 ─ 実際に残業(所定外労働)が行われた順に通算

この通算の結果、1日8時間または1週40時間の法定労働時間を超えた部分(法定外労働)に対して、該当する企業が36協定の締結・届出や、割増賃金の支払いを行う義務が生じます 。

日々の運用の大きな負担

この現行のルールでは、割増賃金を正しく計算するために、本業先と副業先の労働時間を1日単位で細かく管理しなくてはなりません 。さらに労働者自身にも「毎日の細かい自己申告」といった重い負担が発生しています 。

この複雑な事務負担がネックとなり、以下のような問題が生じていると指摘されています 。

  • 企業が雇用型の副業・兼業を自社の労働者に許可しにくくなる
  • 副業を希望する他社の労働者を新しく雇用することを躊躇してしまう
  • 労働者が企業に内緒で副業・兼業を行う「隠れ副業」の原因になる
  • 労働者が会社に許可されないことで、副業・兼業そのものを諦めてしまう

2.何が変わろうとしている?

今回の報告書では、この過度な管理負担を解消するために、

「賃金計算上の労働時間管理」と「健康確保のための労働時間管理」を切り離して分けるべき

という方針が打ち出されました 。

ポイントは大きく2つに分かれます。

① 割増賃金の算定では「通算を適用しない」方向へ

日々の煩雑な割増賃金計算の手間をなくすため、割増賃金の支払いに関しては労働時間の通算を要しない形にする方向で議論が進められています 。これは現行法の解釈変更レベルではなく、明確な「法制度の整備(法改正)」として取り組まれる予定です 。

② 「健康確保」のための通算管理は継続

一方で、労働者の過労を防ぎ健康を守るという目的は非常に重要です 。そのため、労働者の健康確保を目的とした労働時間の通算管理については、今後もそのまま継続(維持)されます 。

3.経営への影響は?

割増賃金の通算管理が不要になることで、経営や現場には以下のような好影響が期待されます。

  • 副業・兼業の受け入れ・許可がスムーズに:これまで企業側を悩ませていた「他社の労働時間を1日単位で把握して割増賃金を計算する」という複雑な定常業務が解消されるため、副業ルールの緩和や外部人材の雇用がしやすくなります 。
  • 隠れ副業の防止と実態把握の健全化:労働者側も申告に伴う心理的・事務的負担が減るため、会社へオープンに副業を相談しやすくなります 。結果として企業側が労働者の正しい労働実態を把握しやすくなるメリットがあります 。
  • 労務管理の「健康ファースト」へのシフト:割増賃金の計算はシンプルになる一方で、総労働時間の把握など「労働者の健康を守るための配慮」は引き続き一貫して求められます 。企業としては、より本質的な過労防止や健康管理にリソースを集中させる必要があります 。

4.さいごに

これまで多くの企業が副業・兼業の導入に踏み切れなかった大きな要因である「割増賃金の通算計算」が、いよいよ見直される大きな転換点にきています 。

賃金計算の事務負担がグッと軽減される方向へ進む見込みですが、従業員の「健康確保」という安全配慮義務の重要性は変わりません 。

制度の改正を見据え、自社の副業ルールのあり方や、従業員が安心して柔軟に働ける健康管理体制の整備について、今のうちから準備を進めていきましょう 。

これを機会に「健康経営優良法人」の取得も目指してみては如何でしょうか?

今回を持ちまして、「労働基準関係法制研究会報告書」の7つの項目すべて終わりました。

高市首相による「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和検討」の指示により、実際の改正案は、今のところ分かりません・・・。

しかし、現在の社会や経済の構造変化は、恐ろしいぐらい加速しています。法律の改正も追いつこうとしていますが、更に一歩を進めていく必要があると思います。

「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした」ということは、如何に労使が一体になれるかにかかっています。

どうすれば一体となれるのか・・・。一度、ご相談頂ければ幸いです。